藤井聡京大教授「第二波に備え『8割自粛』を徹底検証すべし」【緊急反論①】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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藤井聡京大教授「第二波に備え『8割自粛』を徹底検証すべし」【緊急反論①】

「専門家」に対する藤井批判は「患者から医師に対する疑義申し立て」である

?(5)岩田氏の「反論」

 さて、岩田氏の連載における四つの記事には様々な議論が記載されています。岩田氏は冒頭で、『今回の藤井聡先生の質問書、そしてそこで批判がなされた西浦博先生についてでですが、両者のいずれについても、全面的にどちらが正しいとか間違ってるという話とは違うと思います。』とおっしゃっていただいていますので、当方の議論にも一理があると認識いただいているものと思われますが、以下の三点については、「間違っている」と批判されています。

  1)藤井氏は「4月7日の時点で何もしなくてもいい」というが間違っている。藤井氏は実効再生産数が1を下回っていたから後は何もしなくてもいい、と論じているが、実効再生産数は日々に変わるものだからその指摘は「間違い」だ。そもそも緊急事態宣言以外の様々な取り組みがあって、感染が抑止されていたのだ。

  2)(藤井氏が言う様にGW空けの時点で)西浦氏・専門家委員会が、すべて理解して、「3月中に収束していく状況にあった」ということを理解するのは困難だった。

  3)提唱する仮説が事後的に間違っていたからといって、人物を評価することはナンセンスである(例えば、「西浦先生が言っていた数字、違ってたじゃない」みたいなことをあげつらって袋叩きにしてはいけない)。しかも藤井氏は、西浦氏のデータだけで、西浦氏を批判しているがそれはおかしい。本来ならそのほかの情報も加味して判断すべきである。

?(6)岩田氏の「個人攻撃をするのはナンセンスだ」という藤井批判の「ナンセンス」

 この連載では、これらに対して筆者の反論をできるだけ丁寧に掲載して参りたいと思いますが、第一回目の今回では、中でもこの3番目の「人物を評価することはナンセンス」という点に改めてお話ししたいと思います。これこそ、筆者の批判の肝となる部分だからです。

 まず、この岩田氏の指摘は、残念ながら筆者の議論に対する単なる誤解に基づいて行われている指摘だと考えます。

 筆者は何も、岩田氏の仮説が間違っているという事を批判しているのではありません。誰でも人は間違えます。科学者であってもそれは一緒。感染症のデータは限られており、例えば実効再生産数の推計には仮定が必須であり、統計的推論以上のことは当然出来ません。

 しかも、感染症対策は不確実な未来に対して行うものですから、事後的にそれが無駄だったということが分かったからと言って、事後的にその人を批判している人がいたら、単なる「後出しじゃんけん」で喜んでるバカです。

 岩田氏は、筆者がどうやらそういう「手合い」と同じだという主旨で批判をされているように筆者は感じましたが(違っていたらごめんなさい)、筆者はそのような「手合い」とは明らかに異なる論点を指摘しています。

?(7)「特効薬の比喩」から考える、西浦・専門家会議の「科学者の倫理問題」

 では、筆者の主張の趣旨は何だったのか・・・その点を明らかにするためにまずは筆者の指摘を改めて、さらに簡潔に纏めておきましょう。当方の指摘はシンプルに言うと、次の様なものとなります。

 「・そもそも緊急事態宣言は経済に極めて深刻なダメージをもたらす。
 ・にも関わらず、緊急事態宣言をやってみたところ、それによる効果は明確に見いだせなかった。
 ・そのことはGW明けには分かっていた筈で、それにも拘わらず、政府の緊急事態宣言を西浦氏や尾身氏は積極的に支持した。これは科学者倫理の視点から許されざるものである」

 こうした理由から筆者は「大罪」という非常に強い言葉まで使って、西浦・尾身氏ら専門家会議を批判する見解の公表に「踏み切った」のですが、この点をより詳しく説明する趣旨で、ここで、ある架空の「特効薬の比喩」についてお話ししたいと思います。

 ・・・今ここに、おそらくはとても効果があるだろうが、実際には効果の程が不確実な「特効薬」があったとしましょう。ただし、その特効薬には「極めて激しい副作用」があることが明らかだったとしましょう。

 僕は、こうした特効薬を使う時は、医者はある種の「慎重さ」を持つ必要があると思います。

 例えば僕がその医者ならば、その特効薬を使った場合、その副作用はもちろんのこと、その有効性がどれくらいあるかに細心の注意を払うと思います。特に副作用は半ば仕方ないとしても、その有効性が薄いかどうかが気になって仕方が無くなるものだと思います。もし効果が薄いということが分かったとき、それはただ単に効果もほとんど無いままに患者を副作用によって傷付ける「毒」になってしまうからです。

 そんな中ある医者が、この特効薬を二ヶ月にわたって使用したとしましょう。でもその医者が、その効果が実はあまり効果的ではなかったんだ、という事が、一ヶ月目あたりで認識できていた(より正確に言うなら、その疑義が濃厚なデータを持っていた)としたらどうでしょう? そしてそれにも関わらず、彼はその特効薬を使い続け、それによってその患者はより激しく副作用に苦しみ続けていたとしたらどうでしょうか?

 僕は、こういう医者は倫理的に大いに問題があると思います。なぜなら、それだけ激しい副作用があるなら、効果もほとんどないままに、タダ単に患者が苦しめられることになるからです。

 しかも、患者がこの医者の事を「信頼」しており、かつ、そのことをその医者が認識しているとしたら・・・もはや、その医者が行っていることは「大罪」だと言うべきものだと思います。

 ・・・筆者が、西浦氏や尾身氏は「大罪」を犯していると申し上げているのは、こうした理由からです。

 僕は、国民と政府から大きな「信頼」を集めている西浦氏や尾身氏らの発言と公表データを拝見し、彼等の振る舞いは、この特効薬の比喩でいう罪深い医者と同じ振る舞いではないかと「思った」のです。

 つまり、「緊急事態宣言による8割自粛」という、副作用(経済破壊)が激しい特効薬を処方していたところ、GW明け頃にはもはやその有効性に重大な疑義を明らかにするデータが出ていたにも拘わらず、その事を表明せず、その処方箋の使用を後ひと月も継続することを積極的に「支持」した―――という風に解釈できると「考えた」。だから、僕は、

 『わたしは、西浦・尾身氏らによる「GW空けの緊急事態延長」支持は「大罪」であると考えます。』

 という私的見解を公表し、私のこの見解が正しい否かを、御両名を含めた国民全員に問うたのです。

 

次のページ(8)藤井の今回の西浦・尾身氏批判は「患者から医師に対する疑義申し立て」である

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藤井 聡

ふじい さとし

1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授(都市社会工学専攻)。京都大学工学部卒、同大学院修了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科研究員、東京工業大学助教授、教授等を経て、2009年より現職。また、11年より京都大学レジリエンス実践ユニット長、12年より18年まで安倍内閣・内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)、18年よりカールスタッド大学客員教授、ならびに『表現者クライテリオン』編集長。文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。専門は公共政策論。著書に『経済レジリエンス宣言』(日本評論社)、『国民所得を80万円増やす経済政策』『「10%消費税」が日本経済を破壊する』『〈凡庸〉という悪魔』(共に晶文社)、『プラグマティズムの作法』(技術評論社)、『社会的ジレンマの処方箋』(ナカニシヤ出版)、『大衆社会の処方箋』『国土学』(共に北樹出版)、『令和日本・再生計画』(小学館新書)、MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実(晶文社)など多数。

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  • 藤井聡
  • 2019.10.28